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 SI住宅のすすめ

  SI(スケルトンインフィル)住宅という言葉が使われだして久しいが相変らず新しい試みという感じで一般化していない。建物の長寿命化の必要性はかなり認識されるようになりそうした試みも多く見られるようになったがSI住宅の普及は速度が遅い。スケルトンアンドインフィルという概念が分かりにくいのか、どの辺に原因があるのか考えてみた。(スケルトンインフィルの概念は住宅としては新しいが商業施設の店舗などには古くから行われている。)例えば通常のマンションで古くなった内装をリフォームするのとどう違うのか。何処までをスケルトンといい、何処までをインフィルというのか素人にはわかりづらい点も多い。ましてや普通の住宅とSI住宅との得失など説明されても理屈はわかっても現実のメリットが目の前の具体的な数字に繋がらないと本当の理解にはなりにくい。SI住宅は何と言っても長期的な視点で考えられたもので、現時点だけの損得ではマイナスばかりである。初期コストがかかる。メンテナンスもなんだか従来よりも面倒なようだ。(実際は反対である。)
これらの誤解はこれまで消費者に本当の事を言ってこなかった事の付けがきているのである。本当の事とは建築物のライフサイクルコストについて何も説明してこなかったという事である。SI住宅に限って急にライフサイクルコストなんてものを取り出してSI住宅の得失を説明しても、建築費がかさむ事の理由付けとしか消費者は理解できないであろう。それに社会そのものが物事をロングタームで考える事になれていない。住宅ローンでも35年がせいぜいである。中古住宅も20年も過ぎれば後は土地代だけという評価の仕方にならされてきた。SI住宅といって急に長期的視点で考えるとお得ですよといわれても、SI住宅にして20年経って中古としてこれまでの物件より高く売れる保障があるのかといわれて現状自信のある返事ができる人はあまりいないであろう。自分が20年経過して住み替える代わりにインフィルを取り替えて住みつづける場合には良いが第三者に売る場合は様々な問題が出てくる。第一番目の問題はスケルトンの評価の問題である。現行のように減価償却をベースにマイナス要素をカウントするようなやり方で評価されたらどうにもならない。第二番目は買い手の購入資金が調いにくい。即ち、インフィルの部分だけでは担保にならないので従ってローンの対象にならない。普通の住宅だったら建築費全体が対象になるのにである。確かに簡単に取り壊しができることはそうであるが、それを資産価値が無いと理解するとしたらSI住宅は成り立たない。苦し紛れにリフォームローンを組む事も可能であるが現状では1,000万円までで、インフィル全部をまかないきれ無い事も多い。インフィル部分をリース方式にするというアイディアもあるが検討課題ではあると思う。
   長寿命化住宅の問題点と共通するが、長期ローンの仕組みと、中古市場の活性化、資産鑑定評価の充実がないと、SI住宅の為の技術開発をいくらすすめても一向に普及しない事になる。それにインフィル部分の不動産登記を可能にし担保にする事が可能なことにする必要がある。このような条件整備を進めると同時に、余りに短期で解体廃棄するような建築物には廃棄にぺナルティーとしての特別廃棄税をかけるとか、長期使用の為のインセンティブを与えるとか、社会工学的な仕組みが必要であろう。それで無ければ只でさえ信用の無い建設産業界が急に、地球環境問題に目覚めた如く、自分たちの仕事が減るような建物の長寿命化やそのための一つの方法であるSI住宅をいくら宣伝しても誰も相手にしてはくれない。しかし、消費者をこれまで蔑ろにしてきた他の産業でも今は真剣に顧客の為に本当の価値あるものを提供するように必死の努力を始めている。建設産業でも真の顧客満足を考える企業が現れてもおかしくは無いはずである。湯で蛙になる事だけは避けたいものだ。