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 社会資本整備とNPOの役割

  平成13年8月に出された国土交通省重点施策の中に、社会資本の整備の中でNPOが果たすべき役割について言及されている個所がある。今後の国土交通省行政の基本的な考え方のなかの民間活力の積極的活用の項目に、「さらに、社会資本の整備・管理等に民間の資金・能力をより積極的に活用する観点からPFI方式の導入を積極的に行うとともに、住民に身近な生活環境・まちづくり、これに関連する社会資本の整備・管理等の分野に置いては、NPOを主体・担い手として位置付けたり、NPOと連携した取り組みを図る等民間主体との協働を積極的に進める。」と書かれている。
具体的には道路、河川、公園等の社会資本の維持管理や整備に関しての役割を期待されているようである。確かに社会資本の真のオーナーは国民であり、利用者も国民であるから、国民の意思を効率的に吸い上げるシステムがあれば、施設の負担者と受益者をダイレクトに結びつける事が可能になる。誠に正論であり一も二もなく賛意を表したい。しかし、多少の但し書きが必要である。それは、新しいNPOを取り込んだシステムがどのようになるか分からないが、社会資本の整備の最終責任者は飽くまでも行政にあるということである。NPOを取り込むやり方は見方を変えると直接民主主義と同じで、衆愚政治や収拾のつかない混乱を招く恐れがある。私自身NPOに関わっているから良く分かるのであるが、NPOといってもいろいろな形態や考え方があり一言でまとめられるものではない。
NPOの組織も大きなものから小さなものまで千差万別であり、理念も確りしたものを持つところもあれば趣味の同好会に近いところもある。それがNPOでありNPOの良いところでもある。もう一つ、NPOと何か取り組むといってもNPOはその性格上一枚岩ではない.色々な意見や経歴の人が混在していて一つの方向性を出す事はかなり難しい。NPOでは入会資格に制限的な条項をつけられないことになっていて、趣旨に賛同すれば誰でもといって良いほど入会は簡単である。したがって意見統一する事は性格上難しい。これもまたNPOの良さでもある。要約するとNPOは千差万別、玉石混交、融通無碍なる存在と考えたほうが良い。その上で、民主主義が間接民主主義を原則としている理由を良く考えてNPOと付き合って欲しいと思う。衆愚政治に陥らないように慎重にやってもらいたいものである。冒頭に言ったように、反対ではなく大賛成であるだけにNPOに対する誤解と過剰な期待で結果がうまくいかない時に、やっぱりNPOは駄目だということにしたくないからである。次に、重点施策が述べている点は雇用の創出である。「さらに、まちづくり、環境、これに関連する社会資本の整備、管理、交通の分野等に於けるNPOの活動に対する支援を通じて、地域コミュニティビジネス等の振興、地域に於ける雇用の創出を図る」と書かれているが、これまた結構な趣旨であって、高齢者の雇用に強い関心を持ってきたわれわれとしては願ってもないことである。しかしこれについても多少の但し書きが必要と考える。NPOの支援を通じてとされているが、先程述べたようにNPOは千差万別、玉石混交であるから、その点を十分に認識して、はじめにNPOに対する支援ありきではなくそのNPOがきちんと社会的使命を果たす能力を持っているかどうか慎重に見極めていただきたい。只でさえ厳しい経済事情の中で仮にも税金を使って業務をやらせるならば、透明性、公開性、公平性など、通常の契約行為に求められる要件は満たさなければならない事は当然であるわけで、NPOを対象にこれを満たしていく事は簡単な事ではない。以上の事は当局者は十分ご存知とは思うが全くの老婆心でのべてみた。この取り組みが良い方向で進行するように大いに期待している。