目次はじめに T.何故今永く愛される建物か U.永く愛されるには V.永く愛されるために W.永く愛される建物を作る為に(提言) X.100年後の街並み Y.200年住宅を注文する エピソード
トピックス『ニューアンドクラフツ』 トピックス『建設環境コーディネーター』 トピックス 『土地問題と永く愛される建物』 トピックス 『NPOと永く愛される建物』 トピックス『日本民家に学び直す』 永く愛される建物 『まとめ」 200年住宅を注文する 永く愛される建物を作る必要があることは、十分に認識できたが,実際に200年住宅を手に入れるにはどうしたら良いかという質問が飛んできそうである。現在住宅産業で100年住宅と言って売り出している業者はある。しかし200年を標榜しているところはないが,100年でも200年でも新築してから何もしなくても良いわけではない。それなりに手入れをしてやらなければどんな家でも使えなくなってしまうし,家は使われ続けなければ長持ちはしない。現在の建築技術では注文主が要求を出せば技術的に200年住宅はそんなに難しい要求ではない。勿論スケルトンアンドインフィル的な発想は不可欠であり設備などのインフィルの更新は当然やらなければならない。問題はスケルトンのほうをどうするかであるが,結論を言えば,実例は山ほどある。外国にもあるし、国内にもある。只、22世紀を目指す建物が200年前と同じもので良いわけはない。レンガや石の組積造でも軸組み工法でも材料を吟味すれば構造様式で決定的な差はない。材料そのものの耐久年数でも確かな品質のものを丁寧に施工すれば大抵200年の命はある。問題になるコンクリートでも200年の実績のあるものがある。と言う事は200年住宅の実現の為の技術的問題は小さなものだけであり,後は其の通りにやるかどうか,出来るかどうかである。この事は,建設技術者なら大抵は分かっている事である。只,経済的な問題でその様な注文はこれまでなかったし、研究所的な施工をやつた機会もないから経験をしていない。昔のように経験的に作っていた頃の人が感でやっていたほうが長持ちするものを作っていた。逆に,解析技術が進んで,経済設計で無駄を無くした近代のほうがぎりぎりの設計で何か施工ミスとか地震や台風のような自然の予期せぬ力が加わると意外にもろいと言う事実がある。従って、注文者は明確に自分の意思を伝える必要がある。即ち,自分の意図はこの建物を200年もたせたいのであるということを信頼の出来る技術者を探し、真剣に伝えればよいのである。問題はコストと工期、設計の良し悪しの判断が,現在の常識ではなかなか難しい事である。所謂相場はないからである。当然,現在のものより若干は高くなるであろうが,トータルコストでは必ず安くなることは請け合いである。メンテナンスコストが安くなるからである。その辺の事まで理解して発注しなければ意味がない。そのためには,設計者,施工者,とは別に,建築のアドバイザーの出来る技術者を依頼すると良い。日本には,其のようなサ―ビスをする習慣がないが新しい職能として少しずつ定着してくるものと思われる。そして,其のアドバイザーには,設計者,からと施工者からの双方からメンテナンスについての意見書の提出を求める事を忘れずに,そして其の評価を確りしてもらうのである。この意見書ないしは計画書の良し悪しが200年の命を決定づけるといっても過言ではない。しかも,この費用を勘案して、LCC(ライフサイクルを通してのコスト)として安くなることが理解できて初めて満足の行く発注が出来る事になる。この事はくどいようであるが一番肝心な事であり、人間理想論や道徳では動かない。大抵は損得で動く。環境問題が重要であればそれが経済に反映されるようになれば良いのであるし,美しさや芸術性も経済的価値を生むまでのものにしていかなければ,広く行われるようにはならない。力づくや強制では世の中は動かない。必然的な価値観の転換でしか価値観の転換は起きない。只人間は限られた情報の中ではそれなりの判断しか出来ないから,出来るだけの判断材料を誰かが提供しなくてはならない。例えば,現在常識となっている環境問題でもレイチェル・カーソンの{沈黙の春}ノ出版がなかったら、ワールドウオッチ研究所の研究発表がなかったらまだまだ人々の認識は遅れたものとなっているであろう。またシーア・コルボーンの{奪われし未来}の出版がなかったら科学物質に対する警戒心はもっと甘いものですんでしまっていたかもしれない。これらの既に明らかにされた環境問題の生活コストへの反映はかなり進んでいると言える。建設に関わる環境経費の負担は情報の量が増えるにしたがって今後増える事があっても減ることはないから,現在の評価は将来にわたって考えれば正しくない事もあるかもしれない。例えば,建設廃材の処理コストは益々高くなっていくから長期使用する建物の有利性は高まっていくであろう。またエネルギー問題の行方も長期使用の建物のエネルギー源の選択には重要である。一つだけポイントを言えば当然省エネルギーを心がけると同時に自然エネルギーの利用を出来るだけ、取り入れることである。この様な総合的なアドバイスの出来る技術者の出現を期待して建設環境コーディネーターと名付けたのである。結論を言えば,建設環境コーディネーターを探して自分の考えを聞いてもらうことから始める事である。それが無理なら,環境問題だけはおおよその事は書物で理解して,建設のエキスパートに相談する事である。そういった良き発注者が増えれば建物の集合体である街並みも次第に調和の取れたものとなり,100年後は日本は江戸の昔以上に美しいガーデンアイランドとして日本文化を発信し続けるであろうと期待している。 |